資生堂の陰謀~潔癖症は仕組まれている?~
http://cambrian.jp/anzai/mixi/diary/1373009.htmlより引用
魚の匂いがつく話で、9年前に書いたテキストを思い出した。
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マッシュルームの陰謀(『Cape-X』 Aug.1995 掲載 )
「自分の匂い」といえば、奇妙な話を耳にした。マッシュルームのエキスから抽出したある成分を飲み続けると、だんだん自分の体臭が消えていき、ついには便の匂いもなくなっちゃうんだそうだ。
なかなか想像力を刺激してくれる話だ。カビやキノコなどの菌類は、不思議な超意識をもっているような気がする。花が虫を引き寄せて交配に荷担させたり、コメが人に食われることによって子孫を増やしたり、そういう現世的な常套戦略をもった遺伝子とはちょっと芸風が違う。カビやキノコは、何を考えているか直ちには理解できないところがある。人間の匂いを消すなんていうのは、なにか底知れぬ陰謀めいたものさえ感じさせる。
ところで、匂いの良し悪しは決してマイナスからプラスに至る単純な数直線ではないし、その中間に無臭があるということでもない。インドールといえば、マッシュルームに無力化されてしまう便の匂い成分のひとつでもあるわけだが、インドールの非常に希釈されたものは香油として使われるそうだ。悪臭は過剰な芳香であり、芳香はきわどく抑制された悪臭でもある。
源氏物語宇治十帖の主人公である薫は、生まれついて持った良い香りを体から放ったという。石鹸やシャンプーの芳香からするととても信じられない話だけれど、しかしきわどく抑制された汗の匂いを想像してみるといい。樹皮や種子の放つような危ない香りが、頭の中でくらくらとくゆるのを疑似体験してしまう。
いたって行儀のよい友人のAは、ひとつだけ悪癖をもっていて、髪を掻き上げたあとで一瞬その指を鼻の近くにもってくる。その一瞬に、Aは自分を嗅いでいるのだ。咎めるほどのことじゃないけど、でもやめたほうがいいんじゃないかな、と言い出しかねて頭の中で反芻するうちに、迂闊にもその癖がうつってしまい、いつのまにかぼく自身も、匂いの自慰を覚えてしまった。自分の体を触って、手を通して匂いを確認しながら、白地図を塗り分けるように自分の匂い分布を確認する作業。これがなかなか懐かしい。
夢のようなことに遭遇するとほっぺたをつねってみる、というのは(実際にそんなことをしている人など見たことないにもかかわらず)お約束の行動イディオムだが、自分を嗅ぐのも同様の自己確認プロトコルだ。自分から発する信号を自分自身で受け取ったという acknowledge信号が、自分が継続的に自分をやっているというリアリティーの基本にある。ふだんほとんど意識にのぼらない、体内から聴こえる顎の音、舌が感じる歯の硬さ、自重を支えるかすかな痛みなども同様。とりわけ、匂いの回路は脳の奥深く突き刺さっている。そして自分が所在なくなってくると、足を揺すったり、かさぶたを剥がしたり、指をしゃぶったり、口びるを噛んだり、自分自身を嗅いだりしはじめる。酸欠に似た、自分欠状態だ。
マッシュルームに騙されてはいけない。彼らが狙っているのは、どうやらわれわれの脳髄にあるIDだ。
(Aug.1995)
http://www.renga.com/capex/ct02t.htm
コメント
2004年09月05日
00:08
安斎利洋
で、なんで資生堂かというと、例のAg+シリーズだ。
人間の皮脂や汗は、皮膚常在菌によって匂いを出すようになる。銀イオンで殺菌してしまえば、汗がにおわない、というわけだ。
今年の蒸し暑い夏のある日、興味本位で買ったAg+のスプレーを首やうなじにまで吹き付け、すっきりした気分で出かけたとき、驚くような体験が待っていた。他人が異様に匂う。まるで自分が犬になったように、近くにいる人が子供か若者か老人かが、目をつむっていてもわかったりする。
鮭は鮭臭いが、鮭は鮭を鮭臭いとは思わない。人間もほかの動物からすると人間くさいわけだけれど、人間は人間を人間臭いとは思わない。普段は、自分の匂いをバイアスにして他人の個別のにおいを嗅ぎ分けているけれど、普通の人間の匂いをなくしてしまうと、いわば匂いの人間圏からドロップアウトする。
もし自分の周囲に匂い的に人間脱落した人がいたら、おそらく自分は人間という獣が匂うだろう。そう思うと、自分も消臭せずにいられない。そうやって、どんどん匂いを消していく「無臭スパイラル」に陥る。
少なからず、清潔ビジネスというのはこのスパイラルに乗って、利益を上げてきたわけだ。いい匂いで生活を満たすことと、自分の匂いを消すことは、同じベクトルのようでいて、実はまったく交差しない話だ。そもそも皮膚の常在菌を完全に殺してしまって、いいわけがない。
マッシュルームの遺伝子は、間違いなく資生堂に紛れ込んでいる。
引用終わり
さあ、においを気にすることによって簡単に消臭していたら、
ますます潔癖症になる仕組みが分かりましたか?
とにかく、そういうことです。
日常に溢れる陰謀ということで、この機会にまとめてドンと紹介していきます。
それで陰謀の日常性を御理解いただけると確信しております。
それにしても、いろんなビジネスがありますね。
魚の匂いがつく話で、9年前に書いたテキストを思い出した。
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マッシュルームの陰謀(『Cape-X』 Aug.1995 掲載 )
「自分の匂い」といえば、奇妙な話を耳にした。マッシュルームのエキスから抽出したある成分を飲み続けると、だんだん自分の体臭が消えていき、ついには便の匂いもなくなっちゃうんだそうだ。
なかなか想像力を刺激してくれる話だ。カビやキノコなどの菌類は、不思議な超意識をもっているような気がする。花が虫を引き寄せて交配に荷担させたり、コメが人に食われることによって子孫を増やしたり、そういう現世的な常套戦略をもった遺伝子とはちょっと芸風が違う。カビやキノコは、何を考えているか直ちには理解できないところがある。人間の匂いを消すなんていうのは、なにか底知れぬ陰謀めいたものさえ感じさせる。
ところで、匂いの良し悪しは決してマイナスからプラスに至る単純な数直線ではないし、その中間に無臭があるということでもない。インドールといえば、マッシュルームに無力化されてしまう便の匂い成分のひとつでもあるわけだが、インドールの非常に希釈されたものは香油として使われるそうだ。悪臭は過剰な芳香であり、芳香はきわどく抑制された悪臭でもある。
源氏物語宇治十帖の主人公である薫は、生まれついて持った良い香りを体から放ったという。石鹸やシャンプーの芳香からするととても信じられない話だけれど、しかしきわどく抑制された汗の匂いを想像してみるといい。樹皮や種子の放つような危ない香りが、頭の中でくらくらとくゆるのを疑似体験してしまう。
いたって行儀のよい友人のAは、ひとつだけ悪癖をもっていて、髪を掻き上げたあとで一瞬その指を鼻の近くにもってくる。その一瞬に、Aは自分を嗅いでいるのだ。咎めるほどのことじゃないけど、でもやめたほうがいいんじゃないかな、と言い出しかねて頭の中で反芻するうちに、迂闊にもその癖がうつってしまい、いつのまにかぼく自身も、匂いの自慰を覚えてしまった。自分の体を触って、手を通して匂いを確認しながら、白地図を塗り分けるように自分の匂い分布を確認する作業。これがなかなか懐かしい。
夢のようなことに遭遇するとほっぺたをつねってみる、というのは(実際にそんなことをしている人など見たことないにもかかわらず)お約束の行動イディオムだが、自分を嗅ぐのも同様の自己確認プロトコルだ。自分から発する信号を自分自身で受け取ったという acknowledge信号が、自分が継続的に自分をやっているというリアリティーの基本にある。ふだんほとんど意識にのぼらない、体内から聴こえる顎の音、舌が感じる歯の硬さ、自重を支えるかすかな痛みなども同様。とりわけ、匂いの回路は脳の奥深く突き刺さっている。そして自分が所在なくなってくると、足を揺すったり、かさぶたを剥がしたり、指をしゃぶったり、口びるを噛んだり、自分自身を嗅いだりしはじめる。酸欠に似た、自分欠状態だ。
マッシュルームに騙されてはいけない。彼らが狙っているのは、どうやらわれわれの脳髄にあるIDだ。
(Aug.1995)
http://www.renga.com/capex/ct02t.htm
コメント
2004年09月05日
00:08
安斎利洋
で、なんで資生堂かというと、例のAg+シリーズだ。
人間の皮脂や汗は、皮膚常在菌によって匂いを出すようになる。銀イオンで殺菌してしまえば、汗がにおわない、というわけだ。
今年の蒸し暑い夏のある日、興味本位で買ったAg+のスプレーを首やうなじにまで吹き付け、すっきりした気分で出かけたとき、驚くような体験が待っていた。他人が異様に匂う。まるで自分が犬になったように、近くにいる人が子供か若者か老人かが、目をつむっていてもわかったりする。
鮭は鮭臭いが、鮭は鮭を鮭臭いとは思わない。人間もほかの動物からすると人間くさいわけだけれど、人間は人間を人間臭いとは思わない。普段は、自分の匂いをバイアスにして他人の個別のにおいを嗅ぎ分けているけれど、普通の人間の匂いをなくしてしまうと、いわば匂いの人間圏からドロップアウトする。
もし自分の周囲に匂い的に人間脱落した人がいたら、おそらく自分は人間という獣が匂うだろう。そう思うと、自分も消臭せずにいられない。そうやって、どんどん匂いを消していく「無臭スパイラル」に陥る。
少なからず、清潔ビジネスというのはこのスパイラルに乗って、利益を上げてきたわけだ。いい匂いで生活を満たすことと、自分の匂いを消すことは、同じベクトルのようでいて、実はまったく交差しない話だ。そもそも皮膚の常在菌を完全に殺してしまって、いいわけがない。
マッシュルームの遺伝子は、間違いなく資生堂に紛れ込んでいる。
引用終わり
さあ、においを気にすることによって簡単に消臭していたら、
ますます潔癖症になる仕組みが分かりましたか?
とにかく、そういうことです。
日常に溢れる陰謀ということで、この機会にまとめてドンと紹介していきます。
それで陰謀の日常性を御理解いただけると確信しております。
それにしても、いろんなビジネスがありますね。
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