「小沢一郎&植草一秀」ビック対談 ~日本人よ自立せよ~
http://www.ozawa-ichiro.jp/massmedia/2001/02.htmより引用
「小沢一郎&植草一秀」ビック対談
夕刊フジ 2001年12月26日
日本経済が危機的状況を迎えている。完全失業率は過去最悪の五・四%に達し、平成十三年の企業倒産件数は戦後二番目の二万社に迫る勢い。来年度の経済成長率も二年連続のマイナスが確実視されている。平成十四年度予算の政府案は二十四日、閣議決定されたが、夕刊フジでは小泉純一郎内閣の経済政策に一言を持つ自由党の小沢一郎党首と野村総合研究所上席エコノミストの植草一秀氏の緊急対談を敢行。一億三千万国民を奈落の底に突き落としかねない、小泉経済政策への疑問や提言などを思う存分に語り合ってもらった。
【二十万、三十万社が倒産予備軍】
――まず、経済の現状分析をお聞きしたい
植草 昨年四月に東証平均株価は二万円を超えたが、それ以降、急転直下で悪化している。株価は一万一〇〇〇円以上下がり、鉱工業生産は前年比でマイナス一二%台という統計開始以来の落ち込み。完全失業率は表向きは五・四%だが、ハローワークに登録していない失業者が激増しており、大方の専門家は一〇%と見ている。戦後最悪の企業倒産、自殺者は三年連続で三万人を超えた。小泉内閣の発足後、経済活動の著しい悪化が進行している。
小沢 その通り。僕が以前から警告してきたように、日本経済はますます深刻な状況になりつつある。これは日本社会の構造的かつ本質的問題が元凶。ここを変えないと日本経済の再生など不可能だ。
植草 小泉首相は「骨太の政策」と語っていたが、実態は「骨拾いの政策」に近い。まさに、阿鼻叫喚(あびきょうかん)(=死に直面するような悲惨な状況の中で、苦しみ泣き叫ぶこと)といった状況に刻々と迫りつつある。経済の悪化と同時に改善の見通しが立たない、極めて厳しい状況といえる。
――来年二、三月にはさらに厳しくなるとの指摘もある
小沢 神様じゃないから断定はできないが、三月の年度末前後には、銀行などの金融機関をはじめ、流通や建設といった不良債権先といわれる業種がバタバタと破綻(はたん)する可能性は高いね。
植草 小泉内閣は「構造改革」という看板を掲げているが、実際は「不良債権の処理」と称する問題企業の破綻推進と、「財政再建」という名の下で緊縮財政を進めている。常識的に考えて、マクロの政策で景気を悪化させながら企業破綻を促進すれば、事態は一段と悪化するだけ。当然、株価も地価も下がり、不良債権問題は拡大していく。
小沢 極めて深刻な事態だ。
植草 現在、銀行は株式の含み益が底をつき、法定準備金にまで手をつけている。いわば、米びつが空の状況。このまま来年四月にペイオフを実施すれば、地域金融機関を中心に大量の金融機関が破綻する。そうなると地域企業が連鎖的に倒産する。一挙に二十万、三十万社が倒産予備軍として浮上してくる。金融恐慌の可能性もゼロではない。
小沢 僕は「都銀の破綻」といった事態もあり得ると思う。現に、ある都銀について「大口預金の引き上げが始まった」という情報がある。都銀が破綻すれば、他の金融機関でも取り付け騒ぎが起きかねない。多くの国民は泰平の余韻に浸って面白おかしく暮らしているが、「目を覚ませ!」と言いたいね。
【小泉首相はタリバン】
――これを放置する政府の責任は大きい
小沢 まったく深刻に受け止めていない。ある政治家が「日本経済は危機的状況だ」と訴えたところ、首相は「そんなことない。景気は悪くないよ」と軽く答えたという。その程度の認識なんだ。平成十四年度予算の財務省原案が内示されたからよく分かるが、小泉改革とは僕たちが主張する社会構造の本質的転換ではなく、財務省の一部にある「歳出の削減」という錦の御旗に乗っているだけ。だから、こんな大不況の中でも歳出削減を進めている。口先だけで中身のないことがハッキリした。
植草 (財務省主導の改革という)基本認識は小沢党首と同じ。改革はミクロの政策なので、景気対策と切り離してできる。例えば、特殊法人改革を細々とやるより、官僚の天下りに抜本的なメスを入れれば、特殊法人に対する役所のインセンティブを排除できて最も効果的だが、これは骨抜きの状態。財務省所管の政策投資銀行などには手をつけさせず、医療費の本人負担を二割から三割に引き上げたり、住宅取得の利子補給の打ち切りなど、最も力のない一般国民が狙い撃ちされている。
小沢 僕も「構造改革か景気対策か」「財政健全か景気対策か」といった捉え方はしていない。口先だけでなく本気で改革に取り組む気でいるから二者択一のような対立的概念とは考えていない。すべてが役人のコントロール下にある日本の社会構造を変える革命的改革は一面ではデフレ要因ともなるので、改革が軌道に乗るまでは財政出動や民間活力を発揮するための大減税も必要だ。
――なるほど
植草 首相の掲げる改革の精神も問題、宗教家や哲学者、教育者ならば「なるほど」と思うが、経済政策は実学であり、専門知識に基づいた木目細かい運営が必要。ところが、経済のメカニズムを無視して理念や哲学だけで突っ走っているため、経済がどんどん悪化している。この段階での改革はある種の手術に近く、点滴や麻酔と輸血が不可欠だが、首相は患者の血を抜き、断食を強いて、力がなくなってからメスを入れている。これは改革ではなく傷害や殺人に近い。
小沢 理念や信念があればまだいい。首相が「弱い者はみんな死ね。強い者だけ生き残ればいい」という考えならば、善し悪しは別にして仕方ないが、そんな理念も哲学もない。ただ、財務省の「財政再建」「歳出削減」といった錦の御旗に乗りながら、言葉とパフォーマンスで「ワーワー」とやるから、国家や国民を大混乱させている。そして、ツケは国民に跳ね返ってきている。
――植草さんは首相に直接アドバイスされたとか
植草 一度、一時間半ぐらいお話したことがあるが、結局は政策の根幹が「緊縮」であり、その象徴が国債の三十兆円枠。例えば、三十三兆円の国債を三十兆円にしたら三兆円節約したように見えるが、税収も落ちるので実際には減らない。逆に、株価の時価総額をアッという間に百兆円も減らした。これは、うまい経済運営ではない。私は予算書の数字だけを追求して、経済や財政を破綻させてしまうやり方を「財政再建原理主義」と呼んでいる。首相は原理主義で「破壊活動」を進める路線に乗っている。
――原理主義で破壊活動を称して「小泉首相=タリバン論」を展開する識者もいる
植草 最大の構造改革は、国の政策決定における財務省の影響を排除することだが、いまや永田町は財務省に占拠された状況で、経済財政諮問会議も裏側は財務省一色。日本がいま景気が悪いのは、景気対策が効かなかったためではなく、実際は良くなりかけたときに?、逆噴射?・したことが最大の問題点なのに、財務省による情報操作でそこに人々の目が向かないように腐心している。
【日本人よ自立せよ】
<――国民は洗脳されている?は
小沢 もともと、日本人は?、お上意識?・が強いから。お上の最たる集団は財務省。大企業の経済人も、結局、みな同じ学校(東大)だからね。成績が悪い方が民間に行ってるんだから、試験の点数ですべてを判断する彼らの仲間内の議論では勝てるわけがない。企業も国民も文句を言いながら「お上が何とかしてくれるだろう」という感覚でいるので、結局、お上の支配はいつまでたってもなくならない。政治を国民の手に取り戻すには、政治家、国民がもうちょっと利口にならなきゃダメだ。
――早急に何とかしなければ
植草 国民の意識が現実から離れ過ぎている。近代的な高層ビルの上層階の大きな部屋に多数の国民がいると想像してほしい。そこには耐火壁があって他と遮断され、国民はパーティーをしていい気分になっている。でも、ビル全体では何カ所も火が上がって煙も充満しており、国民の一〇%は猛毒ガスで死んだか死にそうな状態。しかし、上層階の人々は何も感じない。岩城滉一のような二枚目俳優が政治芝居をやり、ポスターや写真集を売っているが、刻々と火は上層階に迫りつつある。これがいまの状況。見かけだけで判断せず、裏側の構造を見抜く切実さが低下している。平和ボケか豊かさボケか分からないが・・・。
――国民の多くが危機を自覚していないと
小沢 いま、政治家が本当の意味で官僚支配を否定するような意見を主張したら、間違いなく次の選挙は落選。何人かは当選できたとしても多数派を形成できない。現在の自由党がそうだ。国民が旧体制を維持する方を支持をしているからダメなんだ。日本人全体の知的・技術レベルは世界に冠たるものだが、最も欠けているのは自立。自分で判断して決断する能力が欠けてしまっている。本来的には日本人はそうじゃないと思うのだが、今のままでは「小首傾げて泥沼へ」だな。
植草 そもそも、首相は自民党総裁選の前日に意見の対立する亀井(静香・前政調会長)さんと政策合意を結んで総裁になった。それなのに、議会の多数派が「悪」で内閣が「善」という構図になっている。いわば、かよわい女性に暴漢が襲ってきたところ、白馬に乗った騎士が現われてやっつける劇のようなもの。観客は拍手喝采だが、実は裏で騎士が暴漢に女性を襲うように頼んでいる。テーブルの下で手を握って「道路は作らせるから、民営化という『名』の部分は俺にくれ」と密約している。
小沢 うまいこと言うね。首相は対立する状況をパフォーマンスで作り出して政権を運営している。あれほど派閥支配、経世会支配を批判しておきながら、すべて節目節目では彼らと手を握っている。自民党的政治は小泉首相のもとで何も変わっていないどころか、余計にひどくなっている。それなのに日本人は合理的に考えて決断をすることをしないから、ひとたび、経済の大混乱が起きた場合には、単なる経済問題というばかりでなく、日本人の精神の混乱、破壊に及ぶのではと非常に心配している。
植草 「お上と民」という精神構造は、江戸時代に定着したものだと思う。そうした意味で一六〇〇年体制といえるが、自分で判断する二〇〇〇年体制に変えなければならない。いまだに、ほとんどの日本人は付和雷同型で「どっちが多数派か」「いまの時流は何か」を見ているだけ。マスコミにもその傾向がある。時流に乗らず体制に迎合しない人々が育っていく必要がある。
小沢 僕らは少数派だけど、賛否を別にして明確に自分たちの主張を打ち出す政治集団があるということが大事だと思う。いまは自民党も他の政党も主張が何だか分からない。誤解されることがあっても、合理的な政治判断を下していくべき。植草さんも政府ににらまれているかもしれないけど(笑)、きちっと意見をおっしゃってるでしょ、それが大事なんだ。誰の前でも自分の考えた結論をきちっと言うことが、健全な社会のために必要なんだよ。
植草 首相も、ある朝記者会見して「回復なくして改革なし」とボソッと言う。そういう君子豹変ができれば、変わる可能性もあると思うが、そのためには反対意見にも常に耳を貸す姿勢を持ってほしい。
ここまで
お二人のこの主張はいまだに色あせてはいない。
予告:今週末、前から申していました「エイズと731とスミスクラインの関わり」を
記事としてまとめたいと思います。楽しみにされていた方は、それまでお待ちください。
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「小沢一郎&植草一秀」ビック対談
夕刊フジ 2001年12月26日
日本経済が危機的状況を迎えている。完全失業率は過去最悪の五・四%に達し、平成十三年の企業倒産件数は戦後二番目の二万社に迫る勢い。来年度の経済成長率も二年連続のマイナスが確実視されている。平成十四年度予算の政府案は二十四日、閣議決定されたが、夕刊フジでは小泉純一郎内閣の経済政策に一言を持つ自由党の小沢一郎党首と野村総合研究所上席エコノミストの植草一秀氏の緊急対談を敢行。一億三千万国民を奈落の底に突き落としかねない、小泉経済政策への疑問や提言などを思う存分に語り合ってもらった。
【二十万、三十万社が倒産予備軍】
――まず、経済の現状分析をお聞きしたい
植草 昨年四月に東証平均株価は二万円を超えたが、それ以降、急転直下で悪化している。株価は一万一〇〇〇円以上下がり、鉱工業生産は前年比でマイナス一二%台という統計開始以来の落ち込み。完全失業率は表向きは五・四%だが、ハローワークに登録していない失業者が激増しており、大方の専門家は一〇%と見ている。戦後最悪の企業倒産、自殺者は三年連続で三万人を超えた。小泉内閣の発足後、経済活動の著しい悪化が進行している。
小沢 その通り。僕が以前から警告してきたように、日本経済はますます深刻な状況になりつつある。これは日本社会の構造的かつ本質的問題が元凶。ここを変えないと日本経済の再生など不可能だ。
植草 小泉首相は「骨太の政策」と語っていたが、実態は「骨拾いの政策」に近い。まさに、阿鼻叫喚(あびきょうかん)(=死に直面するような悲惨な状況の中で、苦しみ泣き叫ぶこと)といった状況に刻々と迫りつつある。経済の悪化と同時に改善の見通しが立たない、極めて厳しい状況といえる。
――来年二、三月にはさらに厳しくなるとの指摘もある
小沢 神様じゃないから断定はできないが、三月の年度末前後には、銀行などの金融機関をはじめ、流通や建設といった不良債権先といわれる業種がバタバタと破綻(はたん)する可能性は高いね。
植草 小泉内閣は「構造改革」という看板を掲げているが、実際は「不良債権の処理」と称する問題企業の破綻推進と、「財政再建」という名の下で緊縮財政を進めている。常識的に考えて、マクロの政策で景気を悪化させながら企業破綻を促進すれば、事態は一段と悪化するだけ。当然、株価も地価も下がり、不良債権問題は拡大していく。
小沢 極めて深刻な事態だ。
植草 現在、銀行は株式の含み益が底をつき、法定準備金にまで手をつけている。いわば、米びつが空の状況。このまま来年四月にペイオフを実施すれば、地域金融機関を中心に大量の金融機関が破綻する。そうなると地域企業が連鎖的に倒産する。一挙に二十万、三十万社が倒産予備軍として浮上してくる。金融恐慌の可能性もゼロではない。
小沢 僕は「都銀の破綻」といった事態もあり得ると思う。現に、ある都銀について「大口預金の引き上げが始まった」という情報がある。都銀が破綻すれば、他の金融機関でも取り付け騒ぎが起きかねない。多くの国民は泰平の余韻に浸って面白おかしく暮らしているが、「目を覚ませ!」と言いたいね。
【小泉首相はタリバン】
――これを放置する政府の責任は大きい
小沢 まったく深刻に受け止めていない。ある政治家が「日本経済は危機的状況だ」と訴えたところ、首相は「そんなことない。景気は悪くないよ」と軽く答えたという。その程度の認識なんだ。平成十四年度予算の財務省原案が内示されたからよく分かるが、小泉改革とは僕たちが主張する社会構造の本質的転換ではなく、財務省の一部にある「歳出の削減」という錦の御旗に乗っているだけ。だから、こんな大不況の中でも歳出削減を進めている。口先だけで中身のないことがハッキリした。
植草 (財務省主導の改革という)基本認識は小沢党首と同じ。改革はミクロの政策なので、景気対策と切り離してできる。例えば、特殊法人改革を細々とやるより、官僚の天下りに抜本的なメスを入れれば、特殊法人に対する役所のインセンティブを排除できて最も効果的だが、これは骨抜きの状態。財務省所管の政策投資銀行などには手をつけさせず、医療費の本人負担を二割から三割に引き上げたり、住宅取得の利子補給の打ち切りなど、最も力のない一般国民が狙い撃ちされている。
小沢 僕も「構造改革か景気対策か」「財政健全か景気対策か」といった捉え方はしていない。口先だけでなく本気で改革に取り組む気でいるから二者択一のような対立的概念とは考えていない。すべてが役人のコントロール下にある日本の社会構造を変える革命的改革は一面ではデフレ要因ともなるので、改革が軌道に乗るまでは財政出動や民間活力を発揮するための大減税も必要だ。
――なるほど
植草 首相の掲げる改革の精神も問題、宗教家や哲学者、教育者ならば「なるほど」と思うが、経済政策は実学であり、専門知識に基づいた木目細かい運営が必要。ところが、経済のメカニズムを無視して理念や哲学だけで突っ走っているため、経済がどんどん悪化している。この段階での改革はある種の手術に近く、点滴や麻酔と輸血が不可欠だが、首相は患者の血を抜き、断食を強いて、力がなくなってからメスを入れている。これは改革ではなく傷害や殺人に近い。
小沢 理念や信念があればまだいい。首相が「弱い者はみんな死ね。強い者だけ生き残ればいい」という考えならば、善し悪しは別にして仕方ないが、そんな理念も哲学もない。ただ、財務省の「財政再建」「歳出削減」といった錦の御旗に乗りながら、言葉とパフォーマンスで「ワーワー」とやるから、国家や国民を大混乱させている。そして、ツケは国民に跳ね返ってきている。
――植草さんは首相に直接アドバイスされたとか
植草 一度、一時間半ぐらいお話したことがあるが、結局は政策の根幹が「緊縮」であり、その象徴が国債の三十兆円枠。例えば、三十三兆円の国債を三十兆円にしたら三兆円節約したように見えるが、税収も落ちるので実際には減らない。逆に、株価の時価総額をアッという間に百兆円も減らした。これは、うまい経済運営ではない。私は予算書の数字だけを追求して、経済や財政を破綻させてしまうやり方を「財政再建原理主義」と呼んでいる。首相は原理主義で「破壊活動」を進める路線に乗っている。
――原理主義で破壊活動を称して「小泉首相=タリバン論」を展開する識者もいる
植草 最大の構造改革は、国の政策決定における財務省の影響を排除することだが、いまや永田町は財務省に占拠された状況で、経済財政諮問会議も裏側は財務省一色。日本がいま景気が悪いのは、景気対策が効かなかったためではなく、実際は良くなりかけたときに?、逆噴射?・したことが最大の問題点なのに、財務省による情報操作でそこに人々の目が向かないように腐心している。
【日本人よ自立せよ】
<――国民は洗脳されている?は
小沢 もともと、日本人は?、お上意識?・が強いから。お上の最たる集団は財務省。大企業の経済人も、結局、みな同じ学校(東大)だからね。成績が悪い方が民間に行ってるんだから、試験の点数ですべてを判断する彼らの仲間内の議論では勝てるわけがない。企業も国民も文句を言いながら「お上が何とかしてくれるだろう」という感覚でいるので、結局、お上の支配はいつまでたってもなくならない。政治を国民の手に取り戻すには、政治家、国民がもうちょっと利口にならなきゃダメだ。
――早急に何とかしなければ
植草 国民の意識が現実から離れ過ぎている。近代的な高層ビルの上層階の大きな部屋に多数の国民がいると想像してほしい。そこには耐火壁があって他と遮断され、国民はパーティーをしていい気分になっている。でも、ビル全体では何カ所も火が上がって煙も充満しており、国民の一〇%は猛毒ガスで死んだか死にそうな状態。しかし、上層階の人々は何も感じない。岩城滉一のような二枚目俳優が政治芝居をやり、ポスターや写真集を売っているが、刻々と火は上層階に迫りつつある。これがいまの状況。見かけだけで判断せず、裏側の構造を見抜く切実さが低下している。平和ボケか豊かさボケか分からないが・・・。
――国民の多くが危機を自覚していないと
小沢 いま、政治家が本当の意味で官僚支配を否定するような意見を主張したら、間違いなく次の選挙は落選。何人かは当選できたとしても多数派を形成できない。現在の自由党がそうだ。国民が旧体制を維持する方を支持をしているからダメなんだ。日本人全体の知的・技術レベルは世界に冠たるものだが、最も欠けているのは自立。自分で判断して決断する能力が欠けてしまっている。本来的には日本人はそうじゃないと思うのだが、今のままでは「小首傾げて泥沼へ」だな。
植草 そもそも、首相は自民党総裁選の前日に意見の対立する亀井(静香・前政調会長)さんと政策合意を結んで総裁になった。それなのに、議会の多数派が「悪」で内閣が「善」という構図になっている。いわば、かよわい女性に暴漢が襲ってきたところ、白馬に乗った騎士が現われてやっつける劇のようなもの。観客は拍手喝采だが、実は裏で騎士が暴漢に女性を襲うように頼んでいる。テーブルの下で手を握って「道路は作らせるから、民営化という『名』の部分は俺にくれ」と密約している。
小沢 うまいこと言うね。首相は対立する状況をパフォーマンスで作り出して政権を運営している。あれほど派閥支配、経世会支配を批判しておきながら、すべて節目節目では彼らと手を握っている。自民党的政治は小泉首相のもとで何も変わっていないどころか、余計にひどくなっている。それなのに日本人は合理的に考えて決断をすることをしないから、ひとたび、経済の大混乱が起きた場合には、単なる経済問題というばかりでなく、日本人の精神の混乱、破壊に及ぶのではと非常に心配している。
植草 「お上と民」という精神構造は、江戸時代に定着したものだと思う。そうした意味で一六〇〇年体制といえるが、自分で判断する二〇〇〇年体制に変えなければならない。いまだに、ほとんどの日本人は付和雷同型で「どっちが多数派か」「いまの時流は何か」を見ているだけ。マスコミにもその傾向がある。時流に乗らず体制に迎合しない人々が育っていく必要がある。
小沢 僕らは少数派だけど、賛否を別にして明確に自分たちの主張を打ち出す政治集団があるということが大事だと思う。いまは自民党も他の政党も主張が何だか分からない。誤解されることがあっても、合理的な政治判断を下していくべき。植草さんも政府ににらまれているかもしれないけど(笑)、きちっと意見をおっしゃってるでしょ、それが大事なんだ。誰の前でも自分の考えた結論をきちっと言うことが、健全な社会のために必要なんだよ。
植草 首相も、ある朝記者会見して「回復なくして改革なし」とボソッと言う。そういう君子豹変ができれば、変わる可能性もあると思うが、そのためには反対意見にも常に耳を貸す姿勢を持ってほしい。
ここまで
お二人のこの主張はいまだに色あせてはいない。
予告:今週末、前から申していました「エイズと731とスミスクラインの関わり」を
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